※「座談会プロジェクト」の趣旨や経緯などは、「座談会プロジェクトについて」をご覧ください。
2021年11月16日(火) 第3回座談会企画
ゲスト:特定非営利活動法人バニヤンツリー・藤本恵子さん
座談会企画第3回のゲストは、秋田市に事務所を置く特定非営利活動法人バニヤンツリーの代表理事を務める藤本恵子さんです。
とにかく印象的だったのは、藤本さんご自身の興味関心を研究活動や地域での実践に繋げていくエネルギー!終始、笑顔が絶えない会となりました。
本ブログでは、当日話題に挙がったことをキーワードとともに紹介させていただきます。

足元から開発を考える/地域での「国際協力」の意義
秋田で国際協力活動を推進しながら、同時に地域に根ざした活動にも取り組む藤本さんですが、地域での国際協力の意義を以下のようにお話されていました。
●最初は、バングラデシュの農村支援が中心だったため、地域での講座の内容も支援活動と直結しているものが多かった。途上国のことはわかりにくい、という声も実際にあった。
● 国際協力というと、敷居が高いものだと思われがちだけれども、地域や自分の問題を切り口にするとわかりやすくなる。
●地方で市民が、国際協力に関わるきっかけを共有するだけでなく、そうした学びあいは、都市の“意識が高い人”によりがちな『国際協力』 や『市民による国際協力』の担い手の在り方を崩したり、ずらしたりしていることにつながっているように感じる。
●地域の課題だけ見ようとすることをやりがちだけれども、世界の構造から読み解くと見方が変わる。遠くの問題を自分事にいかにできるのか。自覚がないということではなく、自分事にできることで見えることがある。
●途上国の開発に関わって見えてきたことが地域に活かされたというよりも、地域での実践が途上国との関わりにも活かされたことが大きい。
●途上国と日本の地域での実践で大事なのは、『比較・対比』ができること、またそれを『具体的にすること』 である。
秋田での活動にはこういった物語があったことを知るとともに、世界の諸課題が「自分ごと」になるきっかけづくりを地道に取り組まれていることを感じました。さらには、バニヤンツリーの活動は、バングラデシュとのつながりも一貫して持っていたことから、途上国と自分の地域の両方の視点が常にあることは、社会構造や問題を考えるうえで、非常に重要だと思いました。
開発教育と地域
藤本さんにとって「開発教育とは?」「地域で開発教育を推進する中で見えてきたこととは?」どんなことだったのでしょうか。
●開発教育はもともと「都会」の人の概念的な理解からはいっていったところがある。「やや頭のいい人」が途上国との関連を構造的に理解して、概念化をして、地域セミナーを実施していた。「アドバルーン型」の部分がどうしてもあった。
●どこかから借りてきた知識をもって行う開発や開発教育は「手荒い」ものでもあるのではないだろうか。地域のことなら自信をもって話せる、だから参加できる、という流れがあってこその開発教育でないと「うわべ」の議論で終わってしまう。秋田での「開発教育地域セミナー」の入り方も最初は手荒かった。
●地域の中で、地域の文脈に落として開発教育を進めていく中で、自分の言葉で語れるようになった。例えば、バングラデシュの貧困問題やジェンダー問題などを学んだ後に、自分たちの地域に目を向けることによって見えてくる地域の「貧困」問題がある。それらには、問題の性質や構造に共通点がある。それが何なのか、ということを考えることや視点を提供するプロセスに意味がある。
●日本国内にも差別やステレオタイプはたくさん存在する。自分の立ち位置を考えることも常に必要。
●学校教員は地域を語るのが苦手な人も結構いる。特に都会、大都市型は地域について自信をもって語れない。そこを今後どうしていくのかということも開発教育にとって大きな課題である。
●地域に根を張って、生活を作るということが都市部では十分でない。「食」や「水」は生活の基本中の基本であるが、それを意識して生活している都市部の人は一部である。一方で地方はそうした資源に恵まれている。生活の中で開発、開発教育を紐づけていくことは都市部の大きな課題である。
開発や開発教育の「問い直し」にも通じるこの談義は、特にみんなが熱の入った語り合いになっていました。
シロザとアカザ!?〜ローカル知の循環〜
「シロザ」や「アカザ」をご存知ですか。藤本さんはこの植物をよく知った方です。その話を聞けば聞くほどおもしろい!

●食について自分は関心があった。個人の関心をもとにして大学院では栄養学や植物学を研究した。
●バングラデシュの人から教えてもらった「しろざ(白藜)」の効用(貧血に効く)から、自身の地域でもその「しろざ」が生えていることを知り、その効用を自然から受け取ることができる可能性が見えてきた。
●他にも、食の関心の話については、災害時のレシピを作ったり、カレーの教材も作ったこともある。カレーの話はバングラデシュから学ぶものだった。日本の味噌汁に呼応(対比)する形で作った。
●問題や構造の共通性をみるだけでなく、ポジティブな課題の「学びあい」になっている。
●土着の知恵に意味がある。地域の暮らしから社会のあり方を考える。それが、社会構造の捉え直しにもつながるのでは。
好きなことから地域や世界に向き合うことを体現していることに驚くとともに、途上国の土着のローカル知を日本のローカル知へと還元していくそのプロセスとバイタリティに座談会メンバーも興味津々でした。
まとめ
座談会メンバーの中には、山形や福島、新潟にいるメンバーもいることから会の中では「東北トーク」でも盛り上がりました。(「新潟って東北の仲間!?」という議論も!)東北は、食とエネルギーとそして人との繋がりが豊かであること、そしてその循環が地域を持続的にしているという言葉に納得しました。
今回の座談会を通して、生活の場で、生活者として、学びあうことが、地域における学びあいの場づくりの意義であると感じました。
また、そうした場づくりのコーディネーターとして、活躍されている藤本さんやバニヤンツリーの活動は秋田の未来にとって大きな存在であるということを感じました。
藤本さん、ありがとうございました!
第1回 みた農園(岡山県)の三田善雄さん |
第2回 にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RINGの皆さん |
第3回 バニヤンツリー(秋田県)の藤本恵子さん |