前編:“RING”に込めた私たちの思い~輪・話・和・人々の心や社会に響く~
▼RINGとは
国際教育研究会(RING:リング)は、「持続可能な社会づくりに向けた人材育成と教育現場での国際理解教育の推進・連携強化」を目的として、特定非営利活動法人にいがたNGOネットワーク内に設置された研究会です。
JICA教師海外研修OBOGである5名程で現在の形で運営を担うようになり、その後“同志”が毎年増え続け、会の運営メンバーは現在25名となりました。
2017年に「学びあいフォーラム」に参加し、全国の諸団体と1年を通して、よりよい地域社会づくりのための活動の方向性を考えました。
フォーラムを通して「何のためにセミナーをするのか?」「なぜネットワークが必要なのか?」「数年後、私たちはどうなっていたいのか?」など、メンバーの頭とハートを集結させて、ビジョン、ミッション、重点活動、連携計画を考え続けました。RINGという愛称を決めたのもこのときでした。
▼歯車モデル
プログラムの中で、私たちはRINGのあるべき姿を表現する1つのモデルとして「歯車モデル」を考えました。それは、連携の重要性を描いたモデルです。
私たちの母体であるにいがたNGOネットワーク内には、県内の国際協力NGO団体が集って情報交換やイベントの開催を行っています。また、JICA新潟デスクや新潟県国際交流協会といった組織もRINGにとっては身近な存在です。こうした繋がりを活かすことで、「新潟県内において持続可能な社会のための担い手、および教育実践者を増やす」という私たちのビジョンを体現できると思い、RINGの活動において大事な視点となりました。
また、セミナーの開催地を全県(上越・中越・下越・佐渡)へ広げ、それぞれの地に合ったテーマでセミナーを展開することで、多様な立場の参加者と出会うことができ、人との繋がりも広がっていきました。

▼地球規模で物事を考えながら足元から行動を起こす
当初は、教員同士のネットワーク構築がRINGの大きな目的でした。しかしながら、学びあいフォーラムを通じて自分たちのビジョンやミッションを再構築し、実践を重ねた結果、私たちのような地球規模で物事を考えながら足元から行動を起こすきっかけを創るオーガナイザーを地域も必要としている、ということを実感しました。学びあいフォーラムへの参加はRINGにとって大きな転機になったと思います。
RINGにとって、身近な機関との連携、そしてセミナーを通じて出会う多様な人との学びあい、この2つはどちらも「創造」の場であるような気がします。
連携や協働から、さらに「やれそうなこと・やってみたいこと」が生まれました。多様な人と学びあう時間の中から、地域への思い、教育への思い、社会の担い手としての思いが生まれました。それらが、個人や団体の次へのステップへと繋がっています。

愛称のRINGには、輪(繋がり・ネットワーク)、話(人々が対話する)、和(互いに手を取り合って協力する)など様々な「わ」の意味が込められていますが、持続可能な地域づくりを実現する鍵は、まさにそうした「わ」を持って多様な人との学びあっていくことなのだと思います。

後編:「わ」の中で学びあう
▼学びあう関係性
RINGの活動を重ねていく中で、強く感じるようになったことがあります。それは、私たちが創る学びあいの「場(セミナーやイベント)」の中だけでなく、このRINGという輪(話・和)自体に学びあう関係性ができているということです。
後編では、実際に、RINGメンバーに聞いてみた「RINGの活動を通じた変化や学びあい」を紹介します。
▼質問「これまでのRINGの活動を通じて、あなた自身にはどのような変化がありましたか?」
🌝落合 (消防士) | 自分にとってのRINGは”勇気の源”。RINGと出会う前は、「世界平和や環境問題、児童労働等の話をする俺って変わってるかなぁ」と思うこともあった。今は志を同じくする仲間がいるから前に進める。 |
🌎脇坂 (塾講師) | これまでRINGの活動を通じてたくさんの人と意見を交流させてきたことで、多様な考え方に触れた。このおかげで今、私は等身大で国際理解教育や環境問題について自分の言葉で語れるようになった。そして、変化もあった。RINGの活動に関わるスタートは「仕事として」であったが、今は、私にとってのRINGは仕事とも遊びとも異なった広がりのある存在となっている。 |
😊宮 (JICA新潟デスク) | 「持続可能な社会づくりってちょっと難しいこと?もしくは何かを我慢しなきゃいけないこと?」という気持ちから、「楽しいこと、ワクワクすること!」というマインドに変わった。自分の生活や今の世界を見つめ直したり、考え直したり、「こんな考え方もあるのか、こんな人もいるんだな」と気づいたり。それを楽しみながら模索しているメンバーに出会えたことで、自分自身が変わることができた。 |
🌏石塚 (高校教員) | 各々がそれぞれの場で活躍していて(SDGsを広める、質を高める、活動範囲を広げる等)、自分も自分の場でできることをしよう、と刺激をもらえる。地域や校種やフィールドは様々で、各地でメンバーが頑張っているのを聞くと、私も頑張ろうと思える。人との出会いが財産になった。 |
▼質問 RINGの活動を通じて、自身の中で起こった「学びあい」はありますか?
🙄落合 (消防士) | 同じくらいの子どもを持つ親や職場の同僚との間であると感じる。子育てを通じて国際理解教育を実践し、その姿を見せることに親仲間は賛同し、関心を持ってくれた。でも自分はどのように実践したらよいかわからないという声も聞いた。だから、まずは親(自分)が日々の生活の中で、世界との繋がりや持続可能な社会づくりを意識した生活を子どもや周囲に示すようにすることをより心掛けるようになった。 |
🌏中原 (国際交流ファシリテーター推進員) | 私にとって、RINGは出会いの場、繋がりの場というのが大きい。RINGをきっかけにいろんな学校の先生と繋がることができて、昨年はその縁が一つの大きなプロジェクトを形にする成果にも繋がった。この経験は、現場の先生とワークショップを作る楽しさや自身のやりがいに気付くきっかけにもなった。また、このプロジェクトを通じて、ワークショップを作る大学生とそれを受ける高校生、そして派遣校の先生方との間の相互に学びが生まれたと実感している。 |
😀脇坂 (塾講師) | RINGのセミナーをつくる・参加する、RING以外のセミナーに参加する、個人でSDGs関連のイベントを企画する、このような行動を自分から起こすようになった。それらを通じて、中高生や大学生の熱い思いに触れたり、何から始めたらよいか悩んでいる企業の葛藤に触れたり、「もっと知りたい」という声をかけてくれる友人がいたり、それぞれの思いやニーズを知るたびに、自分の学びたいことも増えていった。自分も止まない学びのサイクルの中にいると感じている。 |
🌎宮 (JICA新潟デスク) | メンバーや参加者それぞれの環境や属性(年齢や専門分野など)の違いから、同じような目標を持っていてもそれぞれが関心のある分野や取り組み方に違いがある。繋がり合うことで、別の人のレンズを通して課題を見ることができ、自身の学びにも繋がっていると感じる。 |
🌝石塚 (高校教員) | RINGのセミナーで学んだことを自分なりに解釈して勤務校で伝えたり、自身の考えの修正に至ったり、新しい価値観が芽生えたり、私が学んだことを生徒へ伝え、生徒が学んだことを下級生へ伝え、活動の継続性が担保されて繋がっている。 |
▼人々の心や社会に響く(ベルを鳴らす)活動を
インタビューから感じたことは、RINGの存在が自身の成長・エンパワーメントに繋がり、行動を起こす勇気になっているということです。
「学びのサイクル」という言葉が出てきましたが、仲間の行動や発信から学び、それを自分なりの形でアウトプットしていく、という連鎖反応は、小さな力ではありますが、きっと社会を変革する力になっていると思っています。
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、「セミナーを開催する」ということについて白紙の状態から考えました。「できない、やらない」ではなく、「どんなことならできるか」ということからのスタートでした。
もう1つ、「無理をしない」ということも頭にありました。結果として、オンラインという形でセミナーを企画し、年5回実施してきたものを3回としました。うち1回は、昨年度に反響が大きかった佐渡地域にスポットを当て、佐渡の“グローカリスト”たちによる「SDGs×SADO リレートーク」を実施しました。
教育と地域とSDGsが掛け合わさり、それぞれの実践のフィールドで「持続可能な社会づくりに向けて自分には何ができるか」といった具体的な視座を与えてもらえた回となりました。

オンラインでのセミナー開催には、県外や海外からも参加者が増えたり、移動時間などの運営側の負担も軽くなったりといった利点もありました。また、「アットホームで安心して学ぶことができた」という参加者からの声はオンラインでもこれまでと変わらずにあり、心が温かくなりました。
それが参加者と対話しながら一緒に学びあうスタイルであるRINGの良さなのだと実感できたと同時に、「オンラインでもできることはある」と前向きな気持ちになりました。
RINGは、RINGを通して出会った人が持続可能な地域・社会づくりのために行動を起こすような、人々の心や社会に響く(ベルを鳴らす)活動をこれからも推進していきます。
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