「オンライン学びあい」の開催
6月に実施したオンライン交流会に続いて、学びあいフォーラム事業では、10月3日(土)に各地域から参加者を招いて「オンライン学びあい」を開催しました。
前回は、交流を目的にしましたが、今回は、地域からの話題提供をしていただきながら、実践者どうしが語り合うことを目的に、ライブ感を重視して行いました。

話題提供者は、屋久島から、ミッキーさん(阪根充さん/屋久島サウスビレッジ/屋久島ウェルネスツーリズム協会)、はるかさん(中島遼さん/漁師の暮らし体験宿 ふくの木)、やっくん(福元豪士さん/HUB&LABO Yakushima・ 屋久島環境文化財団)の3名。参加者は、秋田、山形、福島、神奈川、東京、大阪、兵庫、高知から集まり、計16名のメンバーで実施しました。
お話のポイントの確認
本事業のキーワードである、「学びあい」、「コーディネート」「ふりかえり」を踏まえ、「オンライン学びあい」では、以下のポイントを確認しました。
実践をきっちりとした形ではなく、試行錯誤のプロセスとして話してもらう。 |
実践を語る実践者と出会う。実践者が語る「実践」に耳を傾ける。 |
それぞれも地域で「実践」する一人として、語りを消費するのではなく、屋久島の実践を軸に、語り合う。 |
スピーカーによる、自己紹介と、「地域」の様子、地域の「課題」、自身の「実践」や取り組みについて紹介していただいた後、「学びあい」「変化・変容」「持続可能性」のキーワードをもとに、さらにお話していただきました。
スピーカーのお話
まず、自己紹介も含めて、3人の方のお話を聞きました。3人の方のお話(抜粋)は以下の通り。
ミッキーさんのお話
2002年から屋久島に移住して、ユースホステルと長期滞在型のゲストハウスを運営している。10年前から経営環境が悪化し、屋久島全体を考えないといけないと思うようになった。やっくんが主催した「屋久島まちづくりLABO」や、2019年のDEARの「学びあいセミナー」にも参加し、ミッションがクリアになってきた。屋久島への移住まで行かなくても、関係人口を増やしていきたい。ゲストハウスの運営をみんなでシェアしていくことで持続可能になるのではと考えている。好奇心旺盛なので、いろいろやっているが、こういった活動を整理して共通するものを見つけて統合していきたいと思っている。
はるかさんのお話
北海道で育って、東京で働いて、屋久島に移住して結婚した。民宿の女将を4年やった。屋久島経済新聞ライター、花火師などもしている。義父が一本釣りの漁師なので、遊漁船や体験宿を行っている。漁獲量が減っていて、漁業だけでは稼ぐことが難しい。後継者も減っている。このままだと屋久島から漁師さんがいなくなり、おいしい魚が食べられなってしまうのでは。島の温かい風景がなくなってしまうのは寂しい。自分だけでなく地域で仲間と取り組む必要があると考えて、「屋久島まちづくりLABO」やDEARに参加するようになった。
やっくんのお話
NPO法人HUB&LABO Yakushimaの代表理事をしている。屋久島で生まれて育った。屋久島は観光地だけでなく未来に続く世界共通の遺産である。屋久島の価値を広く伝えたいと思っている。関係性をデザインする、豊かさにアプローチするNPOの運営をしている。行政にはできないことをやりたい。大学生、未就学児、小学生、など、様々な人たちを対象に、教育活動をしている。幼児期の子どもたちが安心して遊ぶ場がない、と聞き、幼児向けの親子の遊び場づくりを始めた。自然体験を子育ての選択肢のひとつにしたいと思っている。屋久島の未来をつくるために、対話、挑戦、協働を考えるミーティング「屋久島未来ミーティング」を行っている。「急いでいきたければ、ひとりで行け。遠くへ行きたければ、みんなで行くことだ」という言葉が好き。いろいろな人を巻き込んで、「イマジン屋久島」という活動を始めた。世界遺産の30年を振り返りながら、これからどうやって未来を創るのか、を考えていきたい。
その後、進行の南雲さんからの問いかけで、3人に「学びあい、変化、変容、持続可能性」というキーワードで話してもらいました。
その中で、ミッキーさんやはるかさんの変化のきっかけを作った「屋久島まちづくりLABO」について、やっくんから説明がありました。NPOを始めて2年目で、仲間を増やしていこうとしたときに、県から相談があって始めたもので、もともとあったものをつなげ、参加者が主体的に動ける場をつくれたのが良かった、ということでした。
はるかさんは、「つながることで、様々な選択肢が増えた。続けられる可能性が見えた。仲間が増えた」と語ってくれました。
活動の中で直面している課題については、自分の関心と役割について、活動の継続や移住者と地元の人との壁、人間関係などが挙がりました。
参加者からの質疑応答では、コミュニティを作ることに関してや、危機感や課題は共有されているのか、具体的にはどんな衝突があって、どう乗り越えたのか、などの質問がありました。
その後、小グループに分かれて、話を聞いて気づいたこと、考えたことを話しました。
グループの共有
グループの共有では以下のような意見が出ました。
👀 | 移住者と住民の話について。外から入ってきた人が地域の持続可能性を問い続ける存在だと意味があり、大切な関係性を築けるのでは。 |
👀 | 受け容れる、受け容れられるという関係だけでなく、入った側のまなざしをどう持ち込んで、どう関係性を築けるのか、が重要。 |
👀 | 子どもが地域を好きになる活動によって、自尊感情が高まり、地域にも戻ってくるという。そういう場が増えるといい。 |
👀 | 違う意見が対立したときにどうするのか。地域には、意見が強い人がいるから収まったりすることもある。例えば、デンマークやオランダ、納得いくまで議論する。合意形成の仕方にも違いがある。 |
👀 | コミュニティ形成にこだわらなくても、教育の面や、各自が考えることを大事にすることも、面白い。地元と移住者とのギャップ。外から来た人にしてみたら課題と感じることへのギャップ。仲間として巻き込んで地域を巻き込むにはどうしたらいいのか。 |
👀 | 屋久島の面白い伝統行事。十五夜や、集落ごとの綱引きなど。そういった行事を大事にしていることが垣間見れた。 |
👀 | お話を聞いて、自分たちの活動地であるカンボジアの地域の人の想いと、自分たちの活動への想いにはずれがあるのではないか。自分たちの目的は受け入れられているのか…?将来的には教育の平等について関わることをしたい。 |
参加者の感想を聞いた後、南雲さんから、3人に、「大変な中で地域づくりにかかわり続けられるのは、なぜか」という問いかけがありました。
はるかさん | 自分が住み続けたいと思える島であってほしいというのがある。そのまま自分の暮らしと直結していることだから。 |
ミッキーさん | 楽しいと思ったことはない。自分が地域づくりをやっているのではなく、飛んできたものを受け止めているだけ。この地に生活して事業をしていくものとしてはやるべきことをやっている。 |
やっくん | 子どもに直結することをやることが、自分の使命。やりたいことではなく、やらなければならないことをやっている。そこに自分がいる言い訳を探している。 |
その後、もう一度小グループになって気づいたこと、考えたことを話しました。そして、ふりかえりを兼ねて一言ずつ共有しました。
ふりかえりの一言(一部抜粋)
👀 | 地域づくりに関する「風の人、土の人、10年たつと風土」という言葉が心に残った。屋久島を学ぶためのオンラインツアーがあれば、参加したい。 |
👀 | 二つ学んだ。自分が地域と関わるなかで経済的な盛り上がりにこだわらなくてよいな、と思った。子どもたちや外部の人が学ぶこと。子どもが最強なのでは。子どもを育てるために命がつながっていく。持続可能、などの看板を挙げなくても、人間はやってきたことを、地域でやっている。そこを見失わないようにしていきたい。 |
👀 | 地元にいる人とどういう関係をつくるのか、というのは自分も深めていきたい。還元できるようにしていきたい。 |
👀 | 地域がテーマになると、自分の地域とはなんだろう?自分のなかの地域の稀薄性、がはっきりした。地域性と排他性の話し。自分の中に体験しないと分からない。実は、あこがれもある。次の生き方を考えたい。 |
👀 | テーマは持続可能な地域づくり、持続可能な開発は目的のようにおいてしまいがちだった。日々の暮らしの積み重ねの中に、持続可能な開発、があり、だから、その暮らしが大切になる。 |
👀 | 今回は屋久島の話しだったが、まちづくりのリアルだと思う。うまくいくこともうまくいかないこともリアルで、思いがあって取り組んでいる人はかっこいい。そういう人たちは実はたくさんいて、素敵な人たちが身の回りにたくさんいる。この場もとてもよかった。 |
👀 | 排他性という言葉が印象に残った。地域は居心地の良さと排他性は表裏一体。居心地の良いところは、どうしても他の人を入れたくない、と思う。それを壊していくことが必要。 |
👀 | 高齢者の話が出てこなかったが、屋久島の高齢者は役割があるのか。高齢者のことを聞きたかった。 |
👀 | 地域の人はいろいろなことを言う。ひとりひとりが心の中に葛藤を持っていることに、気づけた。地域づくりをきれいごとにしたら、いけない。地域の中で大変なことは多いけど、全てストーリーになっていく。 |
3時間があっという間に感じるほど充実した時間でした。屋久島の地域の話を聞きながら、みんなそれぞれ、自分の地域、そして自分のかかわりを振り返ることができました。ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。
次回は12月5日(土)に第2回目の「オンライン学びあい」を実施し、2月には今年度最終の学びあいを、予定しています。
スケジュール
・第2回オンライン学びあい:12月5日(土)14:00~
・第3回オンライン学びあい(ふりかえり):2月6日(土)午後
参考:これまでの各地域での実践事例
- ・カンボジアの教育をみんなで一緒に考える(IVYyouth)
- ・「上映会」報告と次回イベントへむけて(ヒメヒコ小郡)
- ・小さな村の…大きな学び!? ①地域の開発問題と防災意識の高まり (みた農園)
- ・小さな村の…大きな学び!? ②地域の開発問題と防災意識の高まり(みた農園)
- ・小さな村の…大きな学び!? ③~国際防災会議の「ふりかえり」と「田んぼde哲学」プログラム~ (みた農園)
- ・小さな村の…大きな学び!? ④~「学びあい」のスイッチ!とその後の活動~(みた農園)
- ・みんなで考える持続可能な暮らし~ユギムラ暮らし~ (ユギムラ暮らし)
- ・「『地域・学びあい・入門セミナー』フォローアップ訪問」(屋久島)
- ・屋久島の観光業の持続とオンラインイベントの可能性(屋久島)
(報告:伊藤容子)